今日は久しぶりに本の感想を書いてみます。『今昔物語絵双紙』田辺聖子文、岡田嘉夫絵。
ちょっと脱線しますが、ほんの1年ほど前まで、私の中で田辺聖子は「多作だけど読むに値しない作家」にカテゴライズされていました。それが偶然読む機会を得て、まったくの見当はずれだったことを知ったのであります。おせいさん(田辺聖子)は、骨太のポリシーをやんわりとした布で華やかにくるんで、ふふふと笑っているような作家でした。なんのこっちゃわからない例えで申し訳ないですが、とにかくしっかりとした文章と言葉使いのできる作家さんです。ここのところNHKで「芋たこなんきん」が人気があるのも喜ばしい。
話を元に戻すと、上述の絵双紙は、おせいさんののびやかな筆使いと岡田嘉夫氏の妖しく美しいイラストが合い混ざって、なんとも艶やかで美しい本でした。これには楽しいおまけがあって、先週読んだ夢枕獏の『鬼憚草紙』に今昔物語がベースの話があり、私は偶然ほぼ同時に華やかな絵巻を読み比べることになったのでした。『鬼憚草紙』の方は天野喜孝がイラストを担当した、こちらも妖しく美しい本です。
二つに収録されていた物語は「鬼とお后」。シンプルに筋をいうと、ある高徳の僧が偶然見たお后に懸想して全てを失い、鬼と化して想いを遂げるという話です。二作は頁数も構成も異なるのでどちらが良いとはいえませんが、夢枕獏の方はお后と鬼の愛の営みにこれでもかというくらい筆を尽くし、おせいさんのほうはその部分は10行ほど。それでいて、どちらも淫靡さを十分に漂わせながら、そこにとどまることなく切なくも美しい物語に仕上げているのはさすがです。
なんとなく平安時代の絵合わせを思い起こし、一人で「わたくしは右方のほうを・・・」などと呟いてみたりして。え?どちらが右方かですって?そんな野暮は仰らないで、ぜひご自身で読み比べてくださいましな。
他に『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』夢枕獏、『大学生の論文の書き方』など。図書館に返してしまったのでタイトルも覚えていない本が数冊あります・・・
