小説でもエッセイでも書評でもいえることですが、まったく私には思いも及ばない深層壮大なテーマを扱うことですごいなーと思わせる作家もいれば、逆に私も考えているようなことを洗練された切り口で鮮やかに表現してすごいなぁと思わせる作家もいます。
どちらも驚嘆すべき才能には違いないのですが、身近な素材を扱う分、より後者のすごさがよくわかります。フォアグラの料理は、はなから自分でできるとは考えていないので純粋に味を楽しむだけですが、肉じゃがなら自分でもつくる分、味の比較ができるのと同じようなものでしょうか。
長々と書いたのは、斉藤美奈子の本を読むと、いつも肉じゃが状態になると言いたかったのです。昨日読んだのは『たまには時事ネタ』。目新しいネタはそれほどありません。考え方や方向性も私と似ている。それ故、その素材に対する手間のかけ方やかくし味などの熟練のプロの味に舌を巻く。うまいなぁと思います。
惜しむらくは一点だけ(でも大きい一点)。挿入された挿絵の中に、縛られた(擬人化された)猫が、刀をふりかぶった男にいまにも首を切られそうになっているイラストがありました。イラクでの悲惨な事件について描かれたものかと推察されますが、あれはいけません、見て不快になりました。良いことをたくさん書いても、あんなイラスト載せたんじゃ、実は他人の痛みには鈍感かも?と、ちょっと疑いました。残念です。
