不条理な夜

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ふさぎの虫にとりつかれたわけでもないのだけれど、なんとなく心がすぐれない夜。詩でも読むかと本を探す。今夜の気分に立原道造では繊細すぎる。ウェルレーヌでは気取りすぎ。実篤先生はお説教臭く、まどさんでは優しすぎ。はてさてここは中也でもと探してみるが、見つからない。
代わりに見つけたのが、高校生の時に買った、A.カミュの『シーシュポスの神話』。おお懐かしい不条理の世界よ!ペラペラとめくってみると、若き日の文学少女は線をあちこち引いているではないか。かわいいのぅ。

最後の方に「キリーロフ」という章を発見。
キリーロフ、ドストエフスキーの『悪霊』の中に出てくる奇妙な男。神の不在を証明するために自殺する男。人類への愛のために死ぬ男。それでいて世界は何一つ変わらなかったのだ。『カラマーゾフの兄弟』のイワン・カラマーゾフも、神に反抗しつつ、結局は敗北する。ドストエフスキーは、神の問題については、イワンとまったく意見を同じくしていたと言われているにもかかわらずだ。
甘ちゃんアリョーシャが子どもたちと仲良く話すシーン。「ぼくたちは死んでも、また蘇って、ふたたびみんなに会えるというのは本当ですか?」「きっとまた会えます。そして過ぎ去ったことをおたがい楽しく語りあうんです。」へっ、とっても美しいシーンなのだ。でも、神を、あるいは神の世界を否定するイワンやキリーロフの、あの強烈な魅力の足元にも及ばない。

詩でも読んで、心静かに眠ろうと思ったのに、なんだかアドレナリンがもちゃもちゃと出て興奮してしまいました。『カラマーゾフ』が売れ続けているみたいなので、『悪霊』や『白痴』なども再訳本が出るかもしれない。それも楽しい話です。

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