愛と絶望のおかき

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お部屋見舞い用のお菓子が入り用になり
詳しい方に何がよいか相談しました。
甘いものは差し入れが多いので、おかきが
いいのではとアドバイスをいただきました。

おかきなら、わが近所の商店街に老舗(ぽい)のがある。
三ノ宮あたりで買うより、地元へ貢献と
初めて店内に入ったんですが、すぐにイヤな予感。
ヨレ気味のおじいさまが1人で座り、見本の箱詰め商品も
色あせて、店内全体に昭和初期の匂いがプンプン。
しかし明日いるので今さらどうしようもない。
覚悟を決めて、箱詰めにのし書きをお願いしました。

声を聞きつけたのか中から、おばーさまが
ゆっくり飛び出してきて、2人で筆ペンと
のし紙を探しておられる。ますます不安に
かられながらも見守る私。すでに脇の下には
ヘンな汗がタラタラ

やっと筆ペンを手に取り、じーさまが書きだした。
う、薄い・・・薄墨でもこれほどまで薄くはない。
しかも何回もなぞっている。ふだん、ほとんど苦情を
言わない私も、さすがに「ちょっと薄いです」と言いました。

筆ペンを変えて、書いている文字が判別できるように
なりましたが、どうも漢字がおぼついていない。
「部屋」「見舞」・・・じーさまも不安になったのか
「漢字がわからなくなったから書いてくれ」と。
ここで私の絶望感も最高潮になりましたが、
紙も無駄にしてるし今から逃げることもできない。
いや逃げ切ることはできるが、あとに残された夫婦の
悲しみを思うと、とても背中は見せられない。

私のこの心意気を知る由もなく、
じーさまは、私の書いた文字を
何度も見ながらのし紙を書き終えたのでした。

もちろん、ここで終わりではない。
包装は、おばーさまの仕事らしく、ささっと
包装紙を出してくる。でも・・・手がふるえてるのね。
もう見ていられなくて、軽く瞑想しながら待ちました。

清々しい「ありがとーございました」の声に見送られ
外にでると、もう汗びっしょり。
おそるおそる紙袋の中をのぞくと、やはり包装も
ぶわんぶわんしてました。

子ども叱るな いつか来た道
年寄り笑うな いつか行く道

のし紙がいらない時に、また買おう。

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